研究テーマ1

1.プラズマが免疫細胞に与える作用や効果の解明

 免疫とは生体内で病原体や異物を排除し、体を守るためのシステムです.その中心となるのがT細胞やマクロファージなどの免疫細胞です.本研究により免疫細胞に酸素プラズマを作用させることで細胞の増殖や分化を促進できることが明らかになってきました.今後は遺伝子発現解析などの手法を用いて,プラズマが免疫細胞に与える作用のメカニズムを解明していく予定です.現在,プラズマを用いた新たながん治療および免疫疾患治療の開発を目標とし,医学部と共同で研究を進めています.

 

2.酸素プラズマを用いた人と環境にやさしい医療用滅菌器の開発

 21世紀はウイルス.細菌との戦いの世紀と言われています.細菌等の微生物を滅菌する技術は医療や食品産業等の広い分野で用いられ,我々を感染症のリスクから守っています.
 現在,医療分野では医療器材等の滅菌にエチレンオキサイドや過酢酸等の劇薬が主に使用されています.これらの滅菌法にかわって,人と環境に安全かつ無害な酸素プラズマを用いた滅菌法を考案し実用化に向けて研究開発を行っています.酸素プラズマ滅菌法では,空気から酸素を取り出してプラズマを発生させるので,プラズマの原材料を用意する必要は無く,あとは電源のみで使用できます.従って,病院内でも非常に安全に使用することが可能です.また,薬剤が入手困難な災害地や未開地でも太陽電池のみで使用可能です.酸素プラズマは1000分の1気圧の状態でのみ発生し,大気圧では酸素分子に戻るため,酸化力の強い酸素プラズマが人に触れることはありません.このことから,換気の出来ない場所で使用でき,将来的には宇宙船や宇宙ステーションでも使用可能です.

 

3.農産物や種子のプラズマ殺菌

 近年,果物や野菜に残留する農薬が大きな問題となっています.これまでの化学薬品を用いた農産物や魚介類の殺菌や防カビ方法の代わりに,毒性・残留性の無い酸素プラズマ・ラジカルを用いた新しい殺菌・鮮度維持方法を開発しています.また,植物の種子に付着している病原性細菌による農産物の被害が多く報告されています.この種子上の細菌をプラズマによる殺菌も行っています.現在,九州内の各大学,農業試験場,装置メーカーおよび九州経済産業局と共同で研究開発を進めています.

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4.酸素プラズマ照射による植物の成長促進

 iPS細胞による治療は画期的な技術ですが,増殖に長い時間(数ヶ月)を要することが課題でした.プラズマで細胞に刺激を制御しながら与えることで,細胞増殖期間が短縮することが期待されます.同様にウイルスの増殖効果も期待され,製薬などへの応用が考えられます.
 一方,植物に対してプラズマを照射すると植物の発芽や成長が促進されます.この現象は種苗育成や植物工場での栽培促進などに応用可能であること,また世界レベルで問題となっている食糧危機問題の解決につながると考えられます.